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● 雨玉センチメンタリズム --- 第二話 デアイ ●

 お祭りがあった七月が終わり、一年で一番暑い時期である八月に入った。そんなある日、私は本当になぜかわからないけれど、ふと思いついて、夕刻の稽古を抜け出し、神社へと続く裏山に入っていった。
 お祭りの後、夜遅くに例の男の子が先に帰った後、一人で裏山を駆け下りてくると、必死で探している道場住み込み弟子の人とかより少し離れた稽古道場にて、両親が正座をして待っていた。その後は案の定ものすごい剣幕で父親に怒られて、母親には次の日ずっとご飯の量を減られてた。そのことは今でも忘れないのに、私はあるはずの無い第六感がうずいた気がして、神社に向かっていたのだ。
 例の男の子は、あの日以来道場に顔を見せていなくて、だから私は彼の名前を覚えていないのかもしれない。ふと、思い出すことをひそかに期待した。
 
 裏山を駆け下りると、そこはちょうど神社の裏だった。この前のお祭りのときは誰も居なかったから、今日も大丈夫だと油断しきってがさがさ音を立てながら歩いていると、人影がいることに気づいて、とっさに息を殺して木々の間に隠れ込んだ。間から目を凝らしてみると、その人影がこの前のお祭りの女の子、、、、神田ユウって子だと気づいた。
 これはチャンスだと思って(今となっては、何がどうチャンスだったのかよくわからないけど)私は二度ほど深呼吸をすると、意を決して森から姿を現した。

「誰だ!」
 気づかれるのは早かった。ユウが、練習用であろう番傘を私に剣みたく突きつける。距離は少し離れてる。練習しすぎた後が見える番傘は、ところどころ和紙が破れてたり、変色していたりで本来の傘の役割は果たせていなかった。
「えと、突然ごめん。私。」
 しばらくじーっとユウを見ていると、彼がすっごい剣幕でにらめつけてきたので、ああ、誰かと聞かれたんだから名乗ろうと思って、そういった。すると、しばらく間をおいてユウはこういった。

「・・・女?男じゃないのか?」

 カチン

 自分で自分の頭がイカレタ気がした。
 ものすごいユウがむかついて、ものすごく失礼だとか、でもこれは父上のせいなんだとか、私は何にも悪くないとか、あでも父上の計画は成功だとか、そんなこといってる場合じゃないとか。心の中で自問自答を繰り返し、そして結局、私もユウも罪はないということに気づき、でももしもこれの二の舞があったら、今度はユウが生きていられるかわからなかったので、やんわりとしかってあげることにした。

「そういうの、言わないほうがいいよ?ほら、私は大丈夫だけど、ものすごく怒る人もいると思うし。あと、女の子なのに、その口調はないんじゃない?」

カチン

 今度は、私ではないないものがイカレタ気がした。

「お前、今なんていった。」
「え・・・?」

 だって、ユウはとってもきれいな顔してて、お人形さんみたいに整えられてて、髪もすっごいうらやましいくらい綺麗で、ホント取り替えてほしいくらいなのに・・・それが、男の子、、、なんて考えられない。

「そ、そんな・・・」
 驚愕しているところは、さっぱりとユウに流されてしまった。
「お互い様だろ。お前、道場のとこの娘だろ?」
「う、うん。」
家ではお前しか生まれず、そして家当主は代々男。だが昔からの予言で、おまえの代の当主が家に代々伝わる妖刀をありのままに操れるといわれているため、おまえは男として育てられた。そうだろ?」
「え・・・なんで知ってるの?」
「村の長老やらがうちにきて話してるのを茶運びながら聞いてるからな。聞かない振りして。」
「それで、貴方はどうなの?」
「俺か?俺は・・・お前の逆だ。」
「違うでしょ?貴方は家ではないわ。」
「そこじゃない。神田神社では雨乞いの巫女というものが存在する。現巫女は俺の曾祖母だ。彼女の死期も巫女とはいえ、そろそろ近づいてきている。その跡取りとして選ばれたのが俺だ。」
「でも、巫女さんって女がなるものでしょう?」
「だから俺は女として育てられたんだ。」

 女なのに、男として育てられた私と、男なのに女として育てられたユウ。
 まったく逆の私たちが言葉を交わしたこの日の空は、ちょうど雨が降る直前、雲が重く感じる曇天の空が広がっていた。

「一雨、来そうだな。」
「うん。」
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